2022.10.13犬の肥満細胞腫について
犬の皮膚にある「できもの」を、単なるイボか虫刺されだろうと放っておくのは危険です。
もしかしたら肥満細胞腫という悪性腫瘍(がん)かもしれません。
肥満細胞腫は犬の皮膚の悪性腫瘍の中で最も発生率が高く、あっという間に全身の臓器に転移して命を落とすことがある怖い病気です。
このため、皮膚にできものができていたら、なるべく早く受診するようにしましょう。
肥満細胞腫とは
肥満細胞とは、アレルギー反応などに強く関わりのある血液由来の細胞です。
肥満細胞はヒスタミンなどの炎症を起こす物質を持っていて、必要に応じてそれらを放出して、体を守っています。
肥満細胞腫はこの肥満細胞が異常に増殖し続ける病気です。
悪性腫瘍ですので、リンパ節をはじめ全身に転移することがあります。
原因
明確な原因は不明で、遺伝性が高いと考えられています。
シニア犬で多いと言われていますが、若くても発症します。
好発犬種としてゴールデンレトリーバーやパグなどが挙げられますが、どの犬種でも起こり得えます。
ちなみに肥満とは関係はなく、太っているから罹りやすいということはありません。
症状
基本的には皮膚の「できもの」以外に症状はありません。
この「できもの」に本病特有の特徴はなく、イボのようだったり虫刺されのようだったり、赤く腫れていたりとさまざまです。
悪性腫瘍なので「できもの」が大きくなるスピードは早いですが、それだけで肥満細胞腫と言い切ることはできません。
肥満細胞から炎症性物質が大量に放出された場合は、ショック症状や消化管潰瘍などが起こります。
飼い主や犬が患部を触ると、肥満細胞腫が刺激されて炎症性物質が大量に放出されたり、腫瘍が周囲に広がったりすることがあります。
診断
患部に針を刺して吸引した細胞を顕微鏡で観察する「針吸引細胞診」で診断します。
ただし、針吸引細胞診だけでは、腫瘍の深さ(浸潤度)や悪性度(組織学的グレード)まではわかりません。
外科手術で切除した腫瘍を組織検査をすることで、正式な診断が出ます。
組織学的グレードは、予後やその後の治療方針にかかわる重要な情報です。
グレードが高いほど遠隔転移の危険度が高く、予後は悪いとされています。
治療
肥満細胞腫と診断された場合は、外科手術が適応となります。
肥満細胞腫では腫瘍が目に見えない範囲で広がっている場合があるため、大きめに切り取ります(場所によっては断尾や断脚を検討します)。
切除した腫瘍は、「診断」でも説明した通り組織検査にかけ、腫瘍の悪性度や手術で腫瘍が取り切れたかを診断します。
肥満細胞腫は、部位や大きさによっては外科手術では腫瘍を取り切れず、抗がん剤治療や放射線治療を併用することがあります。
当院では、放射線治療に近似した治療として光線温熱療法*を取り入れています。
※光を吸収しやすいインドシアニングリーンという無害な色素を注入し、対外から近赤外線を照射する痛みを伴わない優しい治療法です。熱に弱いがん細胞のみを死滅させます。
<過去の当院での症例はこちら>
日常で気を付けるべきポイント
肥満細胞腫は、原因となる生活習慣や基礎疾患が不明なため、これをすれば罹らないというはっきりとした予防法はありません。
ただ、腫瘍が小さいうちに発見できれば、根治できる可能性が高まります。
このため、普段からおうちのワンちゃんの体を触り、皮膚にしこりができていないかを確認しましょう。そして見つけ次第、相談・受診してください。
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