2022.11.15てんかん ~発作といわれて~

 

「てんかん」について①  

飼い犬,飼い猫が痙攣してバタバタ暴れている!手足をピーンと伸ばして意識がなく倒れた! 

などの突然の出来事に驚き,緊急来院されるケースが多くあります。  

多くのオーナー様が「このまま死んでしまうのではないか⁉︎」と大きな不安に襲われるのではないでしょうか?  

「てんかん」とは一体なんなのか、なぜ起こるのか,診断治療はどうしたら良いのか…  

病院でよくオーナー様から質問される内容を、これから2回に分けてお話ししていこうと思います。  

まずは「発作」をみた時、どのように対処したら良いのかお話ししたいと思います。  

焦らず適切に対応することで、発作が起こす動物への身体のダメージを最小限に抑えることができますので、  ぜひお読みください。  

発作が起きた時に家族が行うべき対応 

①まずは深呼吸して落ち着きましょう  

②動物の周りに、ぶつかる危険なものがないか確認しましょう  

③頭を床に打ち付ける様子があれば、大判のタオルなどを頭付近に差し込みましょう  

④可能であればスマホなどで動画撮影しましょう  

⑤どのような症状が起きているのか,意識はあるか確認をしましょう  

⑥時計を確認し,いつから始まり,どのくらい続いているのか確認しましょう  

⑦多くの場合が、数秒から1,2分で落ち着きますが,5分以上続く場合や、意識が戻る前に次の発作が起きる

場合は  迷わず動物病院に連絡しましょう。  

 (すでに発作のお薬をお持ちの場合は投薬してください)  

※抱っこは、動物が無意識で全力噛みをしてくる場合があるので、無理しないでください!  てんかんとは… 

少し難しい内容になりますが,てんかんについて整理していきましょう。  

「てんかん」の定義は  

『24時間以上間隔を空けて、少なくとも2回以上の(非誘発性の)てんかん発作が認められる脳の慢性的機能障害』です。  ポイントは,1度の発作ではてんかんとは言えないということと、「脳の病気」ということです。  

「てんかん」は原因によって以下のように分類されます。  

   ①特発性てんかん…脳波以外の検査では明らかな異常が見つからないてんかん  

   ②構造的てんかん…MRI検査,脳脊髄検査,抗体検査などで脳に明らかな異常があって起こるてんかん              脳奇形、脳腫瘍、脳炎、外傷、血管障害など  

「てんかん発作」の定義は  

『大脳皮質神経細胞に生じる過剰な電気的興奮によって生じる短時間かつ自己収束性のエピソード』です。  

……む、難しいですね😢。。  

簡単に言うと、脳の神経細胞(ニューロン)たちが勝手に異常な興奮を始めて、一緒に周りも巻き込んで大騒ぎして、勝手 に終わる、脳自体が原因の発作ということです。 

また、脳以外の異常によって起こる発作を「反応性発作」と言います。  

例えば,何かの中毒,低血糖、低酸素,肝臓や腎臓が悪い、低カルシウムなど、脳以外の臓器や全身状態が悪くて発作 が起きることがあり、てんかんとは区別されます。  

このような反応性発作は,原因(すなわち低血糖や高アンモニア血症など) が治療されれば,

発作もでなくなることが一 般的です。  

特発性てんかん 

特発性てんかんはさらに以下のように分類されます。  

①遺伝性てんかん  

②おそらく遺伝性てんかん  

③原因不明のてんかん 

①「遺伝性てんかん」は、原因遺伝子がはっきりしているてんかんのことを言い、3犬種、

3種類のてんかん遺伝子が分かっています。  

  ◻︎ラゴット・ロマニョーロ:LG12遺伝子の異常  

  ◻︎ベルジアン・シェパード:ADAM23遺伝子の異常  

  ◻︎ローデシアン・リッジバッグ:DIRAS1遺伝子の異常  

あまり日本では馴染みのない犬種ですね。  

ちなみに、猫の遺伝性てんかんは、まだ分かっていません。  

②「おそらく遺伝性てんかん」は、原因・関連遺伝子はまだ特定されていないが,家族性または遺伝性が強く

示唆されるものを指します。  

 スピッツ、ゴールデン・レトリーバー、ハンガリアン・ビズラ、アイリッシュ・ウルフハウンド、シェットランド・シー プドック、スタンダード・プードル、ボーダー・テリア、ボーダー・コリー、ラブラドール・レトリーバー、オーストラ リアン・シェパード、バーニーズ・マウンテン・ドッグ、キャバリア・KC・スパニエル、コリー、ダルメシアン、  ジャーマン・シェパード、ビーグル,ダックスフンド、シベリアンハスキー、キースホンド、スタンフォードシャア・ブ ル・テリア、シッパーキー、プチ・バセット・グリフォン・バンデーンイタリアン・スピノーネ  

見てわかるように、馴染みのある犬種(流行っている犬種)が多いため、今後の各犬種の遺伝子解析が重要になります。  

(注)  

「遺伝性」とは「特定の遺伝子に変異が起きる」という意味で「子孫に受け継がれる」という意味ではありません!  

③原因不明のてんかん  

よく一般的に言われる「特発性てんかん」がこれにあたります。  

すなわち,遺伝性てんかんの3犬種ではなく,遺伝子検査も陰性,おそらく遺伝性てんかんで知られる犬種でも

なく, 家系にてんかん歴もなく、構造的てんかんでもない場合,です。  

多くのてんかんの犬と、約半数のてんかん猫がここに分類されます。  

構造的てんかん 

以前は「症候性てんかん」と言われていたもので、頭蓋内あるいは脳の病態によって引き起こされる発作を(24時間以 上空けて2回以上)起こすもので、MRIなどの画像検査、脳脊髄液検査、遺伝子検査、病理検査などで確認されます。  

頭蓋内あるいは脳の病態とは…  

◻︎脳血管障害:脳伷塞や脳出血の後遺症としてのてんかん  

◻︎炎症性•感染性疾患:脳炎に続発するてんかん  

◻︎外傷性:頭部外傷後に出るてんかん 

◻︎奇形性•発生性疾患:水頭症、滑脳症、多小脳回などの脳奇形に伴うてんかん  

◻︎腫瘍性疾患:脳腫瘍(髄膜腫やグリオーマなど)に続発するてんかん  

◻︎変性性疾患:ラフォラ病、ライソゾーム病,認知症などに関連して生じる転換  

てんかん発作の症状 

ここまでは、「てんかん」という病気の原因による分類をしてきましたが、ここからは「てんかん発作」という症状に よる分類をしていきましょう。  

てんかん発作は、症状に応じて以下のように分類されます。  

①焦点性発作:脳のある一部分で発作が起こる=症状も部分的で、意識はある時とない時がある。         (例)瞳孔散大、耳が後ろに反る、顔面の痙攣、口をくちゃくちゃする、流涎、手のひきつけetc 

②全般発作:発作の始まりから脳全体が一斉に発作を起こし、通常は全身が痙攣し、意識もない。        

数秒から数分で終わる。  

       

全般発作はさらに、痙攣性と、非痙攣性に分けられます。  

     ①痙攣性全般発作  

       ◻︎強直間代性発作:強直性発作から間代性発作が起こるもの  

       ◻︎強直性発作:全身に力が入って、手足をピーンと伸ばして小刻みに震える        

       ◻︎間代性発作:手足,口をガクガク,バタバタと大きく動かす  

       ◻︎ミオクロニー発作:筋肉が全体的に電撃を受けたようにビクンビクンと急激に何度も収縮する       ②非痙攣性全般発作  

       ◻︎脱力発作:瞬間的に全身の筋肉の力が抜け(立っている場合)ストンと床に落ちるがすぐに治る         ◻︎欠伸発作:あまり気づくことがないが,一瞬の一時停止状態で、すぐに治る  

一般的に「痙攣」や「発作」として知られているのは、強直間代性発作だと思います。  

上記のように発作が起きた時、特に注意していただきたいことは、最初にも書きましたが,  発作がいつから始まり、どのくらい続いているか,ということです。  

☆群発発作:24時間以内に孤立した発作が2回以上起きること。  

      発作と発作の間は正常な状態に戻る  

☆てんかん発作重積:次のいずれかの状態に当てはまる場合  

      ◻︎1回の発作が5分以上続く時  

      ◻︎1回目の発作が終わったら,正常な状態に戻る前に次に発作が連続して起こる時  重積と重篤な群発は命に関わることがありますので、すぐに病院にご連絡ください!  

長くなってしまいましたが、今回は、「てんかん」について分類分けして理解を深めていきましょう,と言う

内容でし た。  

少し難しかったかもしれませんが,次回はてんかんの診断、治療についてお伝えいたします。