がん治療・高度治療Cancer treatment / Advanced treatment
Aboutがん治療について
獣医師として日々診察行っていると、高齢の動物が診察に訪れるケースが増えたことを実感します。人間と同様に動物においても「平均寿命の延び=高齢化」に伴い、悪性腫瘍(がん)になるケースが増えていることは明らかです。しかしながら、獣医学と医療機器の進歩により、様々なタイプの腫瘍が、良性・悪性問わず、発見できる時代になりました。早期に発見できれば十分根治することが可能であり、主な悪性腫瘍(がん)治療には「①外科手術、②放射線療法、③抗がん剤」の3つのアプローチがあります。
①外科手術
病巣を手術により取り切ることができれば、根治を目指す上で最も効果的な治療となり得るアプローチです。 江東どうぶつ医療センターでは、ハーモニック(超音波凝固切開装置)を使用し、縫合糸を使わず止血を行うことが可能です。
縫合糸を使わない・残さない手術(ハーモニック)についてはこちら
②放射線治療
動物医療の場合は人間と異なり、正常組織に影響を及ぼさぬよう、麻酔下で体の外から放射線を照射する外部照射のみを行います。放射線治療を適用するケースは、手術での切除が不可能な部位への治療を行う場合の選択肢となります。しかしながら、麻酔が必要であることや費用が非常に高くなるため、通常はなかなか選択肢に入れられないのが現状です。 そのため、当院では放射線治療に近似した治療を、できるだけワンちゃんネコちゃんへの負担を軽くした形で可能にする、「光線温熱療法(PHT)」を行っております。
③抗がん剤
人間の医療と同様、動物の腫瘍の治療においても、抗がん剤は大きな役割を果たします。 人間に対する抗がん剤療法と比べ、 QOLをより重視した治療計画を組みます。 薬用量が人間に対してのものよりマイルドな設定になっています。
Harmonic Surgeryハーモニック手術
糸を使わない・残さない手術「ハーモニック」を用いた手術について
江東どうぶつ医療センターでは、超音波振動によって発生する摩擦熱を利用して凝固止血切開を行う外科手術機器である、ハーモニック(超音波凝固切開装置)を導入しております。この医療機器を用いることで、止血や凝固切開だけでなく組織の剥離や切開にも利用可能で、縫合糸を使わずに血管を結紮することが可能です。江東どうぶつ医療センターでは、様々な手術にハーモニックを用いることにより、大切なペットの精神的な負担や身体的な負担を和らげ、安全性の高い手術を行っております。
ハーモニックを用いた手術のメリット
- ■手術時間を短縮することができる
- ■手術時の出血量を減らすことができる
- ■縫合糸に起因する術後の合併症のリスクを無くすことができる
術後の合併症「縫合糸反応性肉芽腫」について
手術の際に、血管を縫合するために「縫合糸」という医療用の糸を用いますが、以前は絹糸のような溶けない「体内に残る糸」が使われていましたが、最近では溶ける糸が使われています。しかしながら、ダックスフンドなど一部の動物においては、この縫合糸に反応してしまい、体内で内臓や脂肪が縫合糸と癒着を起こし、肉芽(かたまり)をつくり、様々な症状を引き起こしてしまうケースがあります。こうした縫合糸に対して過敏に反応する動物においても、ハーモニックで手術を行うことで、肉芽をつくるリスクを無くすことが可能です。
Sono Cure動物用超音波手術機 ソノキュア
神経・血管・硬膜を安全に温存し術者のストレス軽減にも役立つ手術器です。
チップは軟部組織用チップと骨組織用チップがあります。
軟部組織用チップは肝臓切除や腫瘍の減容積、胆嚢剥離や強い癒着部分の剥離操作を目的としています。
また骨組織用チップは、巻込みの危険性が全くなく、神経・血管・硬膜近傍の骨切削の操作をより安全に行う事が出来ます。椎間板ヘルニアなどの神経手術での安全性の向上が可能です。
Light hyperthermia光線温熱療法
光線温熱療法について
江東どうぶつ医療センターでは、放射線治療よりもワンちゃん、ネコちゃんに負担の少ないがん治療法として、光線温熱療法を行っています。この治療法は、がん細胞の生存温度の上限(42℃程度)と正常細胞の上限(45℃)の差を利用し、熱に弱いがん細胞のみを死滅させる効果が期待できます。
光を吸収しやすいインドシアニングリーン(ICG)等の薬剤を静脈注射、あるいは点滴にて体内に注入し、光の中で最も生体深達性の高い波長帯の近赤外線(600nm〜1600nm)を体の外から照射します。この治療法は、ワンちゃん、ネコちゃんにとって痛みを伴わない優しい治療法です。
詳細については、お気軽にお問い合わせください。
Hernia / Trauma healing promotionヘルニア・外傷治癒促進
ヘルニアについて
ヘルニアの症状で診察に訪れる動物が以前と比べて増えています。
ヘルニアは、椎間板物質が飛び出して脊髄神経を圧迫することで痛みを伴う症状のことを言い、その程度により重症度が異なります。
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- グレード1「痛みや違和感」
- 部屋の隅でうずくまる。排泄がなかなかできない。
抱っこすると「キャン!」と鳴く。
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- グレード2「麻痺・運動失調」
- ふらふらと歩く。
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- グレード3「歩行不可能」
- 自力歩行が困難。
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- グレード4「排尿不可能」
- 排便も困難となる。
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- グレード5「深部痛覚の消失」
- 後ろ足を強い力で刺激しても痛みを感じない。
一般的にグレード4からは外科手術適応となり、グレード3以降はMRIでの椎間板の逸脱場所と程度で判定することになります。グレード3までは内科療法が中心となることが多く、ケージレストによる安静と内服薬・消炎鎮痛剤などで治療を行います。
最近の病院処方のコンドロイチンなどのサプリは性能がよく、治療の補助になります。また、血流により治癒因子が循環するので、保温効果が高い光線温熱療法(PHT)は治癒を促進させ、大変有効です。
グレード1や2の場合であっても、治療中の管理が甘く、散歩や運動を続けてしまうと、さらに悪いグレードへ移行するリスクもあるため、少しでも違和感を感じられたら、なるべく早いタイミングで再度診察を受けていただくことをお勧めいたします。
ヘルニアがその時の基礎疾患であり、胃腸炎症状を併発しているケースも散見され、これは過度に腹圧が上がる結果として渋りから軟便がでたり嘔吐が起こるものと考えられます。こういった場合には、胃腸炎の治療も必要になりえます。他の動物病院からの転院の際に散見される「ヘルニアであるという診断」自体は間違っていないが、消化器症状を併発している場合がありますので、お気になる場合にはご遠慮なく相談ください。
外傷治癒促進について
人間の医療でも幅広く利用されている「スーパーライザー」は、心地よい温熱感とともに、血行を改善し、多くの病気に治療効果を発揮します。そのため、「整形外科手術後の管理」「外傷の治癒促進」等にも大変効果的です。